あなたのおしりの悩みは何ですか?
痔といっても様々な種類があります。症状からあなたの痔を自己診断してみましょう。そして、気軽に近所のおしり医を受診しましょう。
病名
内痔核(ないじかく)
内痔核はおしりの中(直腸側)にできるイボ痔です。排便の時にイボが出ます(脱肛)。時々出血しますが、あまり痛みません。症状が悪化すると指で押さないと戻らなくなります。ついには、歩いている時も脱肛します。柔らかくてピンク色です。
程度により以下に分類します
- Ⅰ度:排便時の出血だけで、脱肛はない
- Ⅱ度:排便時に脱肛するが、自然に戻る
- Ⅲ度:排便時に脱肛し、指で押さないと戻らない
- Ⅳ度:常に脱肛している
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外痔核(がいじかく)
外痔核はおしりの外(肛門側)にできるイボ痔です。おしりの中に押し戻してもすぐに出てきます。痛みも出血もありません。柔らかく茶色です。
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血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)
おしりの縁にできる、硬い紫色のイボ痔です。いきみや便秘がきっかけになります。突然の痛みと腫れが特徴です。その正体は血マメ(血栓)なので破れて出血することもあります。
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痔瘻(じろう)
いわゆる穴痔です。膿のトンネル(瘻管)ができてしまう痔です。おしりの近くにデキモノができ、血混じりの膿が出ます。なかなか治りません。何十年も炎症が続くとまれに癌化します。また、若い男性は、腸の病気(クローン病)が隠れていることがあります。
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肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)
おしりが膿む病気の総称です。腫れて熱をもち、強い痛みを伴います。緊急手術(切開排膿術)が必要です。多くの場合、痔瘻が原因です。根治手術をしないと治りません。糖尿病や腎不全の方は、おしりが腐って死に至ることもあります(壊死性筋膜炎:フルニエ症候群)。
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裂肛(れっこう)
いわゆる切れ痔です。排便時の鋭い痛みと出血が特徴的です。便秘や硬い便で悪化します。再発を繰り返すとイボができ、おしりが狭くなります。
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直腸脱(ちょくちょうだつ)
花が咲いたように腸が飛び出ます。おしりが緩んでくる高齢の女性は要注意です。血液や粘液で下着が汚れてとても不快です。
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潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)・クローン病
潰瘍性大腸炎とクローン病はともに、腸に炎症を引き起こす原因不明の病気で、炎症性腸疾患(IBD)といわれています。現在、日本で急速に増えており、難病に指定されています。
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治療方法
1.生活習慣
重力に逆らい2本足で歩くことを選んだ人間は、おしりに負担をかける運命を背負いました。人間は他のどんな動物より、おしりのトラブルを抱える可能性が高いのです。以下の生活習慣を目安にしておしりの健康を保ちましょう。
潰瘍性大腸炎とクローン病は、食生活の欧米化が原因の一つと考えられています。高脂肪食は控え、ストレスの低い生活を心がけましょう。
愛宕おしり研究会でのアンケート調査で、たばこと痔ろうの関係が明らかになりました。痔ろう患者さんの50%以上が喫煙者です。また、喫煙はクローン病を悪化させます。
日本人はがまん強く、恥じらいの文化をもつ民族です。欧米と比べ、受診時は状態が進行していて手術になる確率が高い特徴があります。早めの受診は手術率を低下させます。おしりに異変を感じた時は受診しましょう。
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2.軟膏・内服
まずは、軟膏や内服薬で治療を始めましょう。
内痔核、血栓性外痔核、裂肛などに対して、軟膏治療は効果的です。また、血のめぐりやキズの治りをよくする飲み薬も効果的です。痔ろうや肛門周囲膿瘍に対しては、化膿止めや痛み止めの飲み薬が効果的です。
便秘、下痢の方には整腸剤を処方いたします。
潰瘍性大腸炎とクローン病には、内服薬・坐剤・皮下注射剤・点滴製剤など多くの治療法がありますが、いまだ確立された治療方法はありません。しかしながら、近年開発された生物学的製剤により、劇的な効果が得られています。
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3.手術
痔核の手術
- ジオン療法(ALTA療法)
内痔核を切らずに注射することで治します。翌日から、脱肛や出血がよくなります。従来の手術と比べ術後の痛みや出血がほとんどありません。再発率が若干高めです。
- 結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)
多くの痔を治すことができる根本的な治療としては優れた手術方法で、古くから世界的に広く行われています。しかし強い痛みや出血をともないます。
- 切除術(せつじょじゅつ)
外痔核の手術方法です。切除はおしりの外側の一部のみで、痛み・出血はごくわずかです。キズは開いたままとしますが、3-4週間で自然にふさがります。外痔核をともなった内痔核はジオン療法にこの方法を追加します。
血栓性外痔核の手術
- 血栓除去術(けっせんじょきょじゅつ)
血栓性外痔核の手術方法ですが、軟膏・内服でほとんど治るのであまり手術は行いません。
痔瘻の手術
- 開放術式(かいほうじゅつしき)
膿のトンネルとおしりの筋肉を切り開きます。再発が少ないのですが、筋肉へのダメージがあります。しかし、日常生活ではほとんど問題になりません。キズは開いたままとしますが、3-4週間で自然にふさがります。
- 温存術式(くり抜き法)(おんぞんじゅつしき)
おしりの筋肉を残して、膿のトンネルをくり抜きます。筋肉のダメージが低いのですが、再発率が問題になります。キズは開いたままとしますが、3-4週間で自然にふさがります。
- シートン法(しーとんほう)
痔瘻の手術方法です。膿のトンネルに輪ゴムをかけてゆっくり切り開きます。開放術式と温存術式の利点をあわせもちます。通院期間が長く、3ヵ月から数カ月かかります。
肛門周囲膿瘍の手術
- 切開排膿術(せっかいはいのうじゅつ)
肛門周囲膿瘍の緊急手術方法です。皮膚を切開して膿を取り出します。あくまでも応急手術であり、後日根治手術が必要です。
裂肛の手術
- 裂肛瘢痕切除術(れっこうはんこんせつじょじゅつ)
慢性裂肛の手術方法です。瘢痕を切除し、おしりの外側は開放創とします。場合によりおしりの筋肉を少し切り、おしりを緩めます。
- 側方皮下内括約筋切開術 (そくほうひかないかつやくきんせっかいじゅつ)
筋肉を少し切り、おしりを緩めます。キズは5mm程です。
- 皮膚弁移動術(スライディング・スキングラフト:SSG)(ひふべんいどうじゅつ)
皮膚をスライド(移動)させておしりを広げます。キズのひきつれ感が多少残ることがあります。
直腸脱の手術
- 経肛門的直腸脱手術(けいこうもんてきちょくちょうだつしゅじゅつ)
もっとも簡便な手術方法です。直腸の粘膜を縫い縮め、3mm幅ほどの人工靭帯を埋め込み、おしりをきつくします。人工靭帯にバイ菌がついた場合は取り除かなければいけません。
- 直腸後方固定術(ちょくちょうこうほうこていじゅつ)
開腹手術や腹腔鏡手術にて、直腸を吊り上げて後方に固定する手術です。全身麻酔が必要です。"近所のおしり医"では実施医療機関は限られます。
クローン病の手術
- クローン病の手術(くろーんびょうのしゅじゅつ)
クローン病は、おしりに潰瘍(裂肛)や痔瘻を伴うことが多く、場合によっては、手術(Seton法など)とお薬の治療を並行して行います。
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